2000-01-12
雪山の救助技術 大阪労山救助隊雪搬出訓練資料
目次
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1.雪上での搬出
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担架搬出
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2.雪上での引き上げ引き下ろしのシステム
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雪上における支点工作とその強度
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転滑落者の救出
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引き上げ引き下ろしシステム
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3.雪崩事故捜索
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セルフレスキュー
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ビーコンのない場合の捜索
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4.雪上事故での救急処置法
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骨折処置
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低体温症
0.事故発生原因
長野県内の事故発生状況(夏冬含む)
http://www.avis.ne.jp/~police/nsangaku.htmlより
区 分 |
件 数 |
件数比率 |
死 亡 |
行方不明 |
負 傷 者 |
無事救出 |
遭難者計 |
転・滑落 |
80 |
66.1% |
11 |
|
69 |
1 |
81 |
病 気 |
15 |
12.4% |
2 |
|
|
13 |
15 |
道に迷い |
2 |
1.7% |
|
|
|
2 |
2 |
落 石 |
2 |
1.7% |
1 |
|
1 |
|
2 |
雪 崩 |
1 |
0.8% |
1 |
|
|
1 |
2 |
落 雷 |
|
0.8% |
|
|
|
|
0 |
疲労・凍死傷 |
13 |
10.7% |
9 |
|
5 |
10 |
24 |
不明・他 |
8 |
6.6% |
2 |
3 |
4 |
|
9 |
計 |
121 |
100.0% |
26 |
3 |
79 |
27 |
135 |
・転滑落が事故件数の、2/3を占めている。
1.雪上での搬出
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ザイル担架を含め各種の搬出法がある。雪面を滑らせれる場合は、
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担架搬出が便利
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(1)背負い搬出
ループザイル、ザック、おぶひもを利用
事故者の体が離れないように固定。
(2)ザイル担架による事故者の梱包
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@ザイル担架を編み、事故者を梱包
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(背中のクッション、保温等をしっかり行う)
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A事故者の足元と肩の辺りのザイル担架の網目から、確保用のザイルを固定する。
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Bツェルトを使って、梱包する。
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(事故者を包んだツェルトを、前で重ねて、カラビナで固定する。)
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Cツェルトの末端は、納豆縛り。
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Dザイル担架の担ぎかたは、テープシュリンゲを肩にかけ、その先にヌンチャクを
付け各自が同じ荷重になるように調整。
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クッションを入れる
(3)ザイル担架やボートによる搬送
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@斜面を引き降ろす場合。
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先導者2名を前に配置。側方に引き役・バランス維持のため数名配置。
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後方に確保用ザイル2本を担架に接続し、2名によりスノーバ、スタンディング
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アックスビレイにより確保。
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必要に応じて前方にラッセル要員を配置。
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Aトラバースする場合。
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山側の側方に2名以上配置し、谷側には支えとして2名を配置、先導者が担架をひく。
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急な斜面の場合は、ガイドロープを張り、数メータおきにスノーバでガイド
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ロープを固定し、事故者が垂れ下がらないようにする。
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B引き上げる場合
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緩斜面は、そのまま引き上げるが、立ち木を避けるためにジグザグとならない
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ように、なるべく直線で引き上げる。
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急斜面は動滑車のシステムを用いる。
2.雪上での引き上げ引き下ろしのシステム
2−1.雪上における支点工作とその強度
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小人数で引き上げ・引き降ろしを行う場合は、ザイル確保できるように雪中に確
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保支点を設ける必要がある。
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@ 各種確保支点
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スノーバ、デッドマン、ボラード、スタンディングアックスビレイ
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A 支点の強度
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50cmスノーバ 300kgで抜ける。
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抜け止め付きスノーバ 長さに関わらず250kgで折れる。
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土嚢袋 600kgで破れる。
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70cmシャフトピッケル 340kgで抜ける。
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(群馬岳連のデータより)
2−2.動滑車による引き上げ
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1/3引き上げシステムを用いて、引き上げる。
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3.雪崩事故捜索
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3−1.セルフレスキュー
(1)雪山に入るための3種の神器
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@ 雪崩ビーコン
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A ゾンデ棒
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B スコップ
(2)雪崩に遭遇したら
仲間が流された
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まずは冷静に!−>直ちにビーコン捜索−>掘り出し ここまでを15分以内に
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@流されている仲間を見続けること (もちろん、自分の安全が第一)
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A雪仲間が雪崩に巻き込まれた地点(遭難点)見えなくなった地点(消失点)を
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覚えておく。
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B雪崩が止まったら、見張りを立てて、遭難点と消失点に、ポールや木などの
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目印をたてる。
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Cすぐにビーコンなどを用いて、捜索をする。
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D見つかれば、直ちに掘りおこして、救急処置を行う。
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不幸にして見つからず、安全上そこを離れなければならない場合は、
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遭難点、消失点が確実にわかるようにマーキングし、その場所周りの
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地形の様子、事故の様子などの記録を残す。
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自分が流された
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@雪崩の流れの端へ逃げる
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A仲間が巻き込まれないように、知らせる。
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Bザック、ストック、スキーを身体からはずす。
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C雪の中で泳いで浮上するようにする。
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D雪が止まりそうになったとき、雪の中での空間を確保できるように、
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手で口の前に空間を作る。
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E雪の中から、上を歩いている人の声が聞こえる場合がある。
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聞こえたら大きな声を出す。
(3)雪崩捜索、及び注意
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@必ず見張りを置く。
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A2次雪崩が追い来たときに、逃げる方向を決めておく
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B指揮者、捜索者、スコップ係、見張りの分担を決める。
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Cゾンデ捜索、ビーコン捜索のいずれの場合も、
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万が一手がかりが見つかっても、他のものはそのまま捜索を継続。
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その場合の発見者の行動は、静かに手を上げ、後はスコップ係に
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任せ、捜索を継続する。
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D捜索範囲は、遭難点−消失点を結んだ延長線上のデブリ末端から消失点まで
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E時間や天気、気温などの記録を必ず取る。できれば記録係をもうける。
(4)ビーコンの取り扱い
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@国際標準の電波457kHzを使っている物を使用する
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A電池は新品を利用。山行前に全員のビーコンの動作を確認しておくこと
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B身体への取り付け方を理解しておくこと
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C捜索中にも身体から離れないように、身体に取り付けること。
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(捜索中にも2次雪崩の可能性はある)
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D山行開始時、毎日の行動開始時に、リーダは1人1人のビーコンの動作を
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確認すること
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E下山まで、かならず身体に付けておくこと。
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Fスイッチを入れた瞬間に誤動作する場合もあるが、フリース等の静電気が
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原因である。一端スイッチを切り再び入れる。
(5)ビーコンによる捜索(電波誘導法)
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ビーコンをゆっくりと振りながら、遭難者のビーコンからの磁力線の密(電波が強い
)となっている方向を探す方法。
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電波を強く受ける方向
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注意点
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・ビーコンは1秒おきに送信するため、体を振って方向を探す時は、各方向に
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1秒以上止まること。
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・最後の2mは、事故者が深く埋まっているとき、信号が弱くピンポイントでは
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特定できないので、直ちにスコップで掘り出すべきである。
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・最後の2mは、腰を落としてビーコンを雪面上に持ってきて捜索すること。
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(6)掘り出しと救出後の処置
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@ゾンデによる場所の特定をおこなうのが望ましい。
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A場所の特定が出来れば、直ちにスコップにより掘り出す。
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B全身を掘り出さす、まずは顔から。
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呼吸停止していることがあるので、確認を!人工呼吸の覚悟必要。
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助けてやりたい一心で、全身を掘り出すと死んでしまう場合がある。
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Cツェルトを用意し、出来れば身体の周りの雪ごと包み込む。
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脇、またの間、首周りをゆっくりと暖める。かつ、全身を保温
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暖めてやりたい一心で、手足をマッサージすると呼吸停止してしまう場合がある。
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(ほとんどの場合が、低体温症になっていると考えること)
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D雪崩にあった者が受けている骨折等のダメージに対して、応急処置。
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E救助の要請・搬送の準備、記録。
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3−2.ビーコンのない場合の捜索
(1)ゾンデによる位置の確認
2点ゾンデ捜索法
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@40cm間隔で横1列に並ぶ。
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A指揮者の「右刺せ 」の指示に従い、 右、「左刺せ」で左を交互に刺す。
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Bすすめの指示で40cm前進
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C全員が前進したら、指揮者は「左、右の刺せ」を指示。
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Dもし何か感触があった場合は、静かに手を上げ、後はスコップ係に任せ、
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捜索を継続する。
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注意
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・ゾンデの抜き差しは、鉛直にまっすぐ行うこと。けして曲げないこと。
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・注意ゾンデ棒を手から話すときは立てて刺しておくこと。
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その他のゾンデ捜索法
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・荒ゾンデ、3点ゾンデ以前行っていた方法
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・荒ゾンデは、2点と同じように並び、自分の前だけさして進む
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(早く捜索できるが、はずす可能性が大きい)
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・3点ゾンデは、自分の前、左右と三点刺す。
感触を確かめよう
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雪の中は、均一ではなく、堅いところや地面や木を人と勘違いすることがある。
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@図のようの堀り、人やザックを入れ、クッションをあてる。
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A片方から人が見て、何に当たっているか答える。
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(2)スカッフ&コール
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@指揮者の元に、1列に並び雪面にしゃがみ込む
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A「スカッフ」で、目前の雪をかき分け、遺留品等の捜索を行う。
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B「コール」で、雪面に向かって事故者の名前を、全員で大声で叫ぶ。
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C直ちに雪面に耳をつけ、応答がないかよく聞く。
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もし応答があれば、静かに手を挙げる。
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D何も応答がなければ、全員同じ距離前進して、上記を繰り返す。
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4.雪上事故での救急処置法
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4−1.骨折処置
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4−2.低体温症
(1)低体温症とは
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身体の中心温度の低下により、身体の生理機能の低下・意識障害・中枢神経障害、
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さらには心臓が停止してしまう。
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なお、凍傷は身体組織の凍結による局所的な慣例障害。
(2)原因と症状
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原因 熱の損失>熱の生産
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@空腹や疲労による熱生産低下
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A雪に閉じこめられる、水に濡れる、貧弱な装備による熱損失増加
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症状
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@軽度の場合(意識障害なし)
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よろめく、転びやすい、無関心、会話が遅い
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指が使えない。軽い錯乱状態
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A重度の場合(意識障害あり)
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震えが止まらない、歩行困難、錯乱状態、身体硬直
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寒さから身を守らなくなっている、アセトン臭の息
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(3)低体温症の処置
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@動かさない
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A断熱マット、ツェルトで保温する
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Bマッサージは禁止
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(冷たい血液が心臓に逆流し、心臓停止する)
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C加熱は徐々に。
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(外部から暖めようとすると、冷たい血液が心臓に逆流してしまう)
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加温は、直接肌に当てず、人肌温度程度のホカロン等で、
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脇、またの間、首周りを、ゆっくりと暖める。
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(添い寝も良い。)
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4−3.蘇生法
5.雪搬出技術一覧
事故者の搬出
ザイル担架
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ツェルト
よる梱包 |
|
ザイル担架
の担ぎ方 |
ボートに
よる搬出 |
スキー板を
用いた担架
|
立ち木を
用いた担架
|
急な斜面で
の下ろし方 |
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支点の
作り方 |
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スタンディング
アックスビレイ |
転滑落者の救出
雪崩捜索
15分以内
|
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3種の
神器 |
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スコップ
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ビーコン
|
|
ゾンデ
|
|
仲間が
流されたら |
|
自分が
流されたら |
救出後の
処置
|
|
心臓が止まっていた
ら
低体温症とは |
|
蘇生術
|
|
低体温の処置
|
ビーコン
よる捜索 |
|
付け方と
取扱上の注意 |
|
誘導法
|
|
交差法
|
ゾンデに
よる捜索 |
|
2点ゾンデ
|
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荒ゾンデ
|
|
3点ゾンデ
|
|
トレンチ
掘る方法 |
|
感触を
確かめよう |
ビーコン・
ゾンデが
ない場合 |
|
スカッフ
&コール |
|
埋没者の声
を聞きとる |
|
埋没体験
|
|
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